【会員企業におけるSDGsの取り組み】

サラヤとSDGs 〜持続可能な社会を目指して〜

サラヤ株式会社 広報宣伝統括部 諸江久美子

 

1.はじめに
SDGs (Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標) は、2015年に国連で採択されました。国際社会の共通理念として、経済・社会・環境の側面から2030年までに達成すべき17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。サラヤは、創業の頃から戦後間もない日本の衛生環境改善に貢献し、現在では植物性洗浄剤の原料生産地のひとつであるマレーシア・ボルネオ島の環境保全活動など、ビジネスを通じた社会課題を解決に取り組んでいます。サラヤが創業した戦後間もない1952年は、衛生環境が悪く感染症が大きな問題となっていました。その問題改善に向け取り組んだのが「手洗いによる予防」。そこで手を洗うと同時に殺菌・消毒ができる日本初の薬用せっけん液と専用容器を開発しました。緑色の薬用石けん液「シャボネット」(図1) は下痢や赤痢の予防に貢献し、手指衛生の習慣は全国に普及しました。これはSDGsの目標に置き換えると「ゴール3:すべての人に健康と福祉」に当てはまります。SDGsのはじまる50年以上前から、サラヤは社会問題の解決に目を向けてきたのです。

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図1 シャボネット石けん液(左)および手洗い場で手 を洗う女性(1970年代)(右)

2-1 「地球にやさしい」の落とし穴
世界遺産に登録された三重県・熊野の豊かな自然の中で育った創業者の強い想いから、サラヤでは創業当初から人と環境にやさしい天然素材を用いた製品を作り続けています。1971年の高度成長期には石油系洗剤による環境汚染が問題となりましたが、環境にやさしい植物原料を用いた植物系洗剤として発売した「ヤシノミ洗剤」(図2) は、ヤシの実由来で生分解性が高く環境にやさしいエコ洗剤としてサラヤを代表する商品のひとつです。しかし、発売から30年以上たった2004年に思いもよらない出来事が起こります。あるテレビ番組から、「ヤシノミ洗剤のせいでボルネオの熱帯雨林が伐採されているのでは?」という取材依頼がありました。ヤシノミ洗剤の原料のひとつである「パーム油」のために、その原料である「アブラヤシ」のプランテーション (大規模農園) が拡大し、ボルネオの熱帯雨林が伐採され、そこに住む野生動物たちが絶滅の危機にあるということでした (図3)。我々にとっては晴天の霹靂で、詳しく調べると「パーム油」の世界的な用途は主に食品ということがわかりました。そして石鹸・洗剤メーカーの中でも規模の小さいサラヤが、使用する量は全体から見ればごく僅かでした。しかしながら「パーム油」を使う企業として、この問題を解決しなければならないという思いから、社長自ら現地へ足を運び現状を調査しました。そして、この番組出演をきっかけにボルネオの環境保全活動がはじまりました。

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図3 熱帯雨林に広がるプランテーション (大規模農園)

2-2 RSPO加盟とボルネオ環境保全団体の設立
ボルネオの森を守るため、翌2005年には、国際組織「RSPO (Roundtable on Sustainable Palm Oil: 持続可能なパーム油のための円卓会議) 」に日本に籍を置く企業としてはじめて加盟し、2010年には日本初となる、環境と人権に配慮したRSPO認証パーム油を原料として使用した商品の販売を開始しました。そして2019年11月、すべての自社製品 (国内販売) において、RSPO認証を100%取得し、2030年に向けて国内外のグループ全体でRSPO認証を取得することを推進しています。また、2006年にはサバ州野生生物局と生物学者らと協力して、州政府公認の環境保全団体「ボルネオ保全トラスト」の設立に関わりました。動物たちの生息に必要な川の沿岸部の開墾地を買い戻し、動物たちが森を行き来でき生物多様性を保つことのできる保全地域「緑の回廊計画」を推進し、2007年よりヤシノミ洗剤などRSPO認証油を使用した商品の売上げの1%で団体の活動を支援しています。「命のサイクル」(図4) と位置づけ、このコーズリレーティッドマーケティングの仕組みがサラヤのSDGsビジネスの基本モデルとなりました。

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図4 命のサイクル

3-1  アフリカ・ウガンダの子どもの命を守る「100万人の手洗いプロジェクト」
創業時の手洗い石けん液の開発以降、アルコール消毒剤、ノータッチディスペンサーなど、衛生環境に厳しい病院や食品衛生の現場を支えてきました。60周年を間近に控えた2010年、創業の原点である「手洗い」で世界の衛生環境の改善に貢献するべく、日本ユニセフ協会とパートナーシップを組み、アフリカ・ウガンダで子どもたちの命を守る「100万人の手洗いプロジェクト」を開始しました。当時のウガンダでの5歳未満児死亡率は1,000人中55人 (図5) でした。原因の多くは下痢などの予防可能な病気であり、正しい手洗いと知識があれば多くの命を守ることができます。この活動を推進するため、日本で販売するハンドソープやアルコール手指消毒剤などの対象商品の売り上げの1%を日本ユニセフ協会に寄付し、ウガンダ現地で展開する手洗い活動と衛生設備を拡充し、現地の子どもたちの命を守っています (図6)。

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図5 ウガンダの5歳児未満の死亡率 (世界こども白書)

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図6 手洗いをするウガンダの子どもたち

3-2  医療従事者の意識をかえた「病院で手の消毒100%プロジェクト」
ウガンダでは、病院などの医療機関でも設備が整わない状況でした。そこで院内感染を防ぐためアルコールによる手指消毒の順守率を上げる実験をおこなった結果、乳幼児死亡率や妊産婦死亡率をゼロにすることができました。この成果を受け、2012年よりアルコール手指消毒剤の普及を目指し、現地で生産し販売していく持続可能なビジネスとして「病院で手の消毒100%プロジェクト」を展開しています。現地法人や工場では雇用を創出し、医療現場への指導を行うインストラクターの育成も行っています。日本の品質管理や技術のノウハウをいかして製造されたアルコール手指消毒剤「AlsoftV」(図7) は、その品質を評価され、医療機関の他にもエボラ出血熱やマールブルグ病の感染対策として、緊急を要する現場でも活用されています (図8)。

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図7 ウガンダで生産されているアルコール手指消毒剤「AlsoftV」

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図8 緊急現場における「AlsoftV」の活用

4.おわりに
10年以上にわたるこれらのボルネオやウガンダでの取り組みが評価され、2017年、全国務大臣を構成員とするSDGs推進本部が、SDGs達成に向けて優れた取り組みを行う企業・団体等を表彰する「第1回ジャパンSDGsアワード」の「外務大臣賞」という大変名誉ある賞をいただくことができました。ビジネスと社会課題の解決が共存し、さらにパートナーシップによって展開する、企業のSDGs達成目標そのものであったといえます。今後もサラヤは“ 持続可能な”ビジネスを軸に、「世界の衛生・環境・健康に貢献する」をスローガンとしてグローバルな展開を続けていきます。

文献
1) 更家悠介:これからのビジネスは「きれいごと」の実践でうまくいく, 東洋経済新報社.
2) サラヤWEBサイト「サステナビリティ」RSPO認証:https://www.saraya.com/csr/env/rspo.html
3) サラヤWEBサイト SARAYA SDGs SOLUIONS:https://sdgs.saraya.com/

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