【会員企業におけるSDGsの取り組み】

Novozymes におけるSDGs への取り組み

ノボザイムズ ジャパン梶@松井知子

 

1.はじめに
2015年9月190か国以上が参加したニューヨーク国連総会。気候変動から食料安全保障まで、人類の持続可能な発展のための2030年アジェンダとそのグローバルターゲットである「持続可能な発展のための目標 (SDGs) 」が合意された。ノボザイムズはその総会に参加し、持続可能性 (Sustainability) に対する取り組みを紹介した。弊社はSDGsを企業目的、戦略、長期的な目標として取り入れ、SDGsとビジネスターゲットを結び付けた先駆的な企業の1つであると自負している (www.businessfor2030.org/novozymes)。

持続可能な発展への取り組みは、環境、社会面からの取り組みだけでは、その重要性に対する「理解」を深めることはできても、企業の活動としては持続し続けることはなかなか難しい。そこで、環境・社会に実際に還元する形にするには経済面でのプラスが必要である。ノボザイムズは、SDGsの提唱されるはるか以前、創業当初より経済・環境・社会の3面から持続可能な社会の実現に取り組んでおり、これが事業自体の中核を成している。Dow Jones のSustainability Indexで12回もトップにランク付けされた要因である。

例えば、気候変動に対するアクション (Goal 13) に関しては、酵素・微生物製品を利用することによるメリット (原料や廃棄物の減少など) でCO2排出量を低減させ、また、農業用微生物の利用により収穫量の増加と原材料投入量の削減が見込め、持続可能な農業の開発に貢献できる。畜産分野においては、動物飼料用酵素を提供することにより飼料の消化率を改善し、使用される原材料の範囲を広げることも可能となり、より高い効率と生産性がもたらされる (Goal 2 ゼロ・ハンガー)。廃水処理にも酵素・微生物製剤を利用することによりスラッジが減少できる。実際に、中国の寧夏、山西、新疆、内モンゴル自治区の工場に、弊社の微生物廃水処理法を提供し、排水のコンプライアンスの向上と水の再利用率の向上を実現している (Goal 6 水の効率的利用促進)。

このコラムでは、これらの弊社の事業と結び付いたSDGsへの取り組みだけでなく、組織や社会に対する弊社のSDGsへの取り組みをさらに紹介していきたい。

2. Goal 4教育、Goal 8持続可能な経済成長、その他のゴールに関する具体例
Goal 4の教育目標においては、Novozymes educationprogram を設定し、世界中の様々な教育機関やNGOと協力し、2011年の開始以来100万人をターゲットにあらゆる年齢の人々にバイオテクノロジー教育を提供している。例えばノボザイムズインドでは、「Voice forBiotech」というスピーチコンテストを開催し、大学生に食料安全保障、バイオ燃料、医療などの分野におけるバイオテクノロジーの役割について発表する機会を提供した。最初の大会では、全国68の大学から2,500人が参加し、受賞者には賞金が授与され、Bangaloreにある弊社の研究施設におけるインターンシップの機会も提供されている。デンマーク本社では、Lyngbyにある新研究棟イノベーションキャンパスの横に、Life learning center (https://life.dk/om-life/english/) という子どものためのサイエンスパークがノボノルディスクファウンデーションの寄付により2021年に完成することになっている。既にそのオープン前から子供たちをノボザイムズの研究棟にも招待し、バイオに関する講習などを行っている。

また、HelloScienceというオープンイノベーションプラットホームの設立に参加し、アイデアを実現させるために人とリソースを結び付けるシステムも構築した。2019年には、安全な飲料水を安価に人々に届けたいというアイデアを選択し、太陽の紫外線と熱を利用し99.9%有害な病原菌を除去するという家庭用簡易精製装置SolarSack (https://solarsack.com/) としての実現化に成功している。ノボザイムズは、このアイデアを実験面からもサポートした。

Goal 8に掲げられている持続的、包括的、持続可能な経済成長のために、効率的な操業に関する目標を設定し、持続的な生産を行っている。既に生産拠点のいくつかでは、バイオガスリアクターを設置して工場排水を利用して発電を行っており、これによりCO2排出量を減らし、エネルギーを節約することが可能となっている。特に、弊社の酵素生産設備の一つは、デンマークのKalundborg市にあるが、ここには1972年より、環境と経済の両方に利益をもたらすKalundborg industrialSymbiosis (www.symbiosis.dk/en/) と呼ばれる企業共生システムがある。ノボザイムズを含む9つの官民企業が共生し、「ある会社からの廃棄物が別の会社の資源となる」という原理の下、生産・廃物の循環を作り出している (図1)。

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図1 Kalundborg Symbiosisでのエネルギー・物質循環

その循環のほんの一部を紹介すると、Kalundborg市に位置するTisso 湖からの水を共生体の企業で冷却水などに利用し、その後飲料水の品質まで処理され、ノボザイムズでの微生物培養に利用される。この水は水道水を利用するより安価である。ノボザイムズでの廃物である工業排水は前述のように工場に併設するバイオガスリアクターでバイオガス生産に利用され、年間47,000 メガワットアワー (デンマークの12,000家庭の消費電力を十分に賄える電力相当分) を生み出し、地域の暖房に利用されている。また、醗酵残渣は滅菌後、NovoGroという肥料として近隣の農家に提供されている。共生体企業のひとつであるOrsted社のAsnas 発電所から出る蒸気は、ノボザイムズにおいて滅菌、蒸留など様々な用途に利用されている。

また、弊社では生物多様性の保護 (Goal 15) と遺伝資源の公正かつ公平な利用促進の観点から生物多様性に関する国連条約 (CBD) と名古屋議定書を尊重、遵守しており、遺伝資源への適切なアクセスを行っていくための社内システムを構築している。社内サンプルデータベースでは、実際のアプリケーションに利用された酵素サンプルの由来、例えば、どの国でいつ単離された微生物からクローニングされたものに由来するなどが確実に追跡できるようになっており、微生物資源の恩恵をうけ、企業の成長を目指しつつ、その利用から生じる利益の公平な分配 (Goal 10国家間の格差是正) を行えるように活動している。

本社のあるデンマークは、世界経済フォーラム (WEF) の発表する「世界ジェンダー・ギャップ報告書2018」のジェンダー・ギャップ指数で149か国中、13位という高いランキングに位置し (ちなみに日本は110位)、日本と比較すると女性管理職も多い。しかし、それでも2020年までに女性上級管理職を30%にするという長期目標をかかげ、多様性を広げるための採用プロセスを確立し、Goal 5に掲げられているジェンダー平等に対して取り組んでいる。実際に、女性管理職比率は毎年向上しており、2018年には既に30%の目標を達成している。また、15社のデンマークトップ企業からなるGender Diversity Roundtable (www.genderdiversity.dk) に参加しており、より多くの女性を指導的役割にしていくためのイニシアチブをとっている。ちなみに、2020年2月に就任する弊社のCEOは女性である。

3.おわりに
ノボザイムズでは他にも様々なSDGsに沿った活動をおこなっているが、実際に持続可能な成長を実現するには、Goal 17に謳われているようにグローバルパートナーシップが必要である。ノボザイムズは事業戦略に「Partnering for Impact」としてグローバルパートナーシップを反映させ、そして、SDGsへの取り組みの多くをパートナー企業とのアライアンスや、共同開発によって達成していくというアプローチをとっている。これにより、さらに多くの企業、アカデミアの実践的なSDGsへの取り組みの手助けに少しでもなることを願っている。

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