【巻頭言】
資源にこだわる
清水 昌
京都学園大学バイオ環境学部/東レ㈱先端融合研究所
読者の多くは、中学、高校の社会科で、「日本は資源が乏しい国だから、技術で国をつくっていかないといけない」と教えられたと思う。日本は石油も穀物も生産量は乏しい。しかし、微生物を資源と位置付けるなら、「日本は、微生物の超資源大国です!」。生物の多様性のことが資源と結び付けて議論される昨今、このことはもっと認識されてもよいと思う。なぜ日本が微生物の資源大国なのか?それは単純な話で、国土は南北に細長く緯度差は30度以上。山あり、川あり、平野もあり、地形が変化に富んでいる。周りは海。四季の変化がある。こんな国は地球儀をみてもほかにない。つまり、日本は気候・自然が多様。例えば、今日、私が勤務する京都学園大学(京都府亀岡市)の土を採取し、そこにいる菌と、数カ月後に同じところで採取した土にいる菌とでは、その種類は大幅に違う。熱帯雨林や砂漠の土ではどうか?熱帯雨林は年中熱帯雨林、砂漠も年中砂漠。微生物はいつも似たようなものしかいない。つまり、日本では、自然の多様性が豊かな微生物資源を支えている。
DTI(英国経済産業省)やEUのWhite Biotechnology会議の報告書には「日本は、国土の周囲が海で、排他的経済水域が広く、日本海溝など特徴的な海域があり、立体的に見ると広大である。その国土が微生物資源を支えている。日本の強みは豊かな微生物資源と、それに基盤を置く探索技術と機能開発から産業化への熱心な取り組みを、化学工業が活発に推進していることにある。また、この種の技術のひとつひとつの積み重ねの上に今の日本の優位性がある」と羨望の念を込めて書かれている。このようなことは、日本自体では案外と気づかれていないのか、それとも自明のことで議論の余地がないのか?あまり話題に上らない。
近年、資源の囲い込み、資源にこだわった政策の展開など資源政策の重要性が世界的に認識されだしたが、微生物を資源政策のひとつの柱に据えた展開は、日本の強みを発揮できる道筋のひとつかもしれない。バイオプロセスを産業的製造プロセスとして更に発展・定着させることは、長期的な国策として取り上げるべき重要課題のひとつである。また、食料や環境保全への展開も高い可能性がある。これらの分野において日本の優位性が認知されている理由は、先に述べたように、独自の優秀な微生物を入手していること、さらにこれから新しい微生物を入手できる確率が諸外国よりも高いと認識されていることにある。10年間ほど国のプロジェクト「微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発(ミニマムゲノムプロジェクト)」に参加して感じることは、研究・開発も、国としての政策・方針も、もっと、自前のユニークな微生物資源やそれに基盤を置く技術にこだわりと自信を持って進めてほしいということである。新しい分野に挑戦することにはリスクがつきものだが、国のプロジェクトである以上、成果をどう展開するのか、「やる」「やらない」を決心しないと始まらない部分がある。ここに国の明確な方針・決心の重要性が絡んでくる。日本は、この部分が明快でなく、展開力に弱いように感じている。