【巻頭言】
シーズ発見型研究のススメ
長谷川淳三
近畿バイオインダストリー振興会議
研究の動機、進め方にはシーズ発見型とニーズ対応型があり、一昔前までは、研究を生業としておられる方へこの質問を発した場合、多くはその返答に予想がたった。製品の生産を目的としない大学や公共の研究所などの人からは、自然の仕組みの第一発見者となる喜びに向けてというようなシーズ発見型の返答をされるのが一般的であり、一方、企業での研究に従事する人にとっての動機はニーズ対応型で、ターゲットをイメージしない研究推進はまず考えられなく、経済的な何々の新規生産技術を開発すると言うような目的研究であることを話されることが殆どである。とは言うものの、ニーズ対応型の研究においても、手品のように無から簡単に有が作り出せものではない。自然の中に規則性、法則性があることに気がつき、それらを科学する喜びの下に営々と解明、蓄積されてきた人類の宝と言うべきシーズ発見型研究成果の結晶があったればこそで、それらの組み合わせ応用の結果として新規生産技術が開発できていることは、ここで敢えて述べるまでもないことである。大括りで言えば、これまでは研究分野で分業してきているが、その一次的果実はニーズ対応型の研究を進めるキャッチアップ研究の実施者が主として享受してきた。
一方で日本の基礎研究者達は、米国などでは基礎研究を志向する研究者でも将来性ある発見に巡り合えば、その成果を基にベンチャービジネスカンパニーを立ち上げ、製品の開発販売へと結びつけ成功を味わうアメリカンドリームの体現の数々を横目で見てきた。遅まきながら日本のバイオの分野においてもベンチャーという言葉が盛んに飛び交うようになり、特に大学を中心に変化が起きている。きっかけは長年議論されてきた大学や公的研究機関の改革の一環で研究者の自由度が高まったこと、研究を資金的に支える側の財政事情の変化等いろいろあると思われるが、これに呼応して、インキュベーション施設の整備やベンチャーキャピタルなど資金的な環境の整備が後押ししている。しかし、それ以上にゲノム解析に見られるような生命の本質に迫るバイオ研究の急速な進展と革新のお蔭で、詳細な生命の仕組みを解き明かす膨大なデータを研究者が努力すれば比較的容易に手にできる状況となった事が大きく影響していると思われる。これまで応用は自分の範囲外と考えてきた基礎研究分野の人達が、自分で掴んだデータの下に新しく発想し、それを素早くアウトプットへと結びつける動きを始められるようになってきた。これはバイオテクノロジーの活用・拡大を促進する意味からも大いに歓迎すべき動きである。今までの発想に無い革新的技術・製品はシーズ発見型研究からの出発が必須であると考えるし、上手くすれば、シーズ型研究者の貴方も甘い果実を享受できるかも知れない。